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形成外科総論

傷についての基礎的なお話(やや難)

ケガの傷口を縫う、手術の際に術野を縫合して閉鎖する。皮膚を縫合するという作業は、外科系のドクターの基本的なテクニックです。

縫合手術をしたあとは、白い線のようなキレイな傷跡になる場合と、赤く盛り上がってしまう場合があります。

糸で縫合した所は、“1週間で抜糸する”などとよく言われます。
抜糸したあとに傷口がパカっと開いてしまっては台無しですが、傷口が開かずに完成するためには、皮膚の合わせた部分がきちんと糊付けされる必要があります。

皮膚の糊付けには、膠原繊維というものが線維芽細胞と呼ばれるものによって作られる必要があります。電子顕微鏡で調べますと、縫合が完成するには1か月以上かかっています。

では、どうして1週間で抜糸することが一般的に行われているかというと、魚の骨のような縫い跡を皮膚に残さないためなのですね。


1)術後瘢痕

その1週間目に抜糸した段階では、縫合部はふつう盛り上がりの無い線状の傷跡になっています。


2)肥厚性瘢痕

抜糸後、縫合部がまわりから引っ張られると、皮膚の深い部分ではまだきちんと糊付けがされているわけではないので、刺激で膠原繊維がどんどん作られていきます。
こうなると、縫合部は赤く盛り上がってきます。
これを私たち専門医は「肥厚性瘢痕」と呼び、一般の方がおっしゃるケロイドとは区別して扱います。
この肥厚性瘢痕は、縫合後、2~3か月目から目立ちはじめます。
そして4~6か月目にピークとなり、1~3年かけて少しずつ赤みや盛り上がりが減っていきます(なんか人生みたいですね)。
最終的には、白い傷跡(成熟瘢痕)となります。


3)ケロイド

問題になるのがこれです。 縫合後1年を経過しても、さらに盛り上がり続ける場合を“肥厚性瘢痕”と別の名前を付けて“ケロイド”と呼びます。
ケロイドは自然に消えていくことはなく、いつまでも増殖します。
ケロイドの治療はなかなか困難であります。
さまざまな治療に抵抗し、専門医でも苦労する場合が少なくありません。



※術後ケアについて

縫合部にケロイドが生じることは少なく、多くの場合は肥厚性瘢痕であります。ですから傷跡をいかにきれいにするかは、肥厚性瘢痕ができてくるのをいかに防止するかがポイントです。
私たちは、抜糸した後に3か月間のテ-プ固定を行い、盛り上がり防止に効果のある飲み薬“トラニラスト”の処方をしています。
テープ固定をすると縫合部がむやみに引っ張られるのを防ぎ、膠原繊維がどんどん増えていくことを防止できます。そのため、抜糸直後からテーピングを開始します。
安価なサージカルテープを縫合線に対し垂直に、少し皮膚を寄せてテンションをなくすように貼ります。
トラニラストも抜糸したらすぐに飲み始めます。3か月飲んで、縫合部がまだ赤く盛り上がりが目立つ場合には、さらに3か月間飲み続けます。6か月続けたら、トラニラスト内服は一段落とします。