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その他 形成手術各論

傷を目立たなくする手術

形成外科では、傷あとを目立たなくさせる手術がよく行われます。
線状の傷跡は、かなりのレベルまで目立たなくさせることができます。
本人と家族がじっと見れば分かりますが、第三者はちらっと見る分には気が付かない程度のレベルになるということです。

まっすぐの長い傷は引きつったり、光ったりして目立ちます。そこでZ型に皮膚を入れ替えて縫うことでシワの線に沿わせて引きつれ予防をしたり、Wというかジグザグにデザインして、光を分散させてぱっと見でわからない仕上がりにします。経験がモノをいう術式ですので、形成外科医歴50年の私には思い入れのある手術です。


(症例1)

これはトラップドア現象と言って、ケガしたときに救急医がいくら丁寧に縫合したとしてもダメです。弁状になっている皮膚が縮んでしまって、そのために段差ができてしまうんですね。この段差を目立たないように縫い直すには形成外科歴30年でもまだまだですぞ!(と若手にハッパをかけてみる。)


(症例2)

こういった交通外傷は、患者さんもお先真っ暗といった雰囲気で来院されるのですが、スタッフ一同、熱意をもって治療にのぞみます。大学では若手にデザインをさせ、ベテランがデザインの添削をし、技術向上に励んでいました。患者さんの笑顔を見ると、本当にやりがいを感じるものです。


(症例3)

近年は、こういった大事故は少なくなりましたが、それでも当事者としては深刻です。欲張って一気に治すのではなく、近くの縫合線同士が干渉しないようにプランを立てなければなりません。
形成外科出身のドクターが美容外科として開業した場合には、こういった経験が非常に役に立ち、傷跡がキレイと評判になっているドクターが多いですね。

熱傷瘢痕の治療

ヤケドの傷跡が目立つのは、傷跡の色あい、ひきつれ、盛り上がりが原因です。
盛り上がりは数年すれば、自然に平らになり、白色の傷跡になります。
しかし、ひきつれは、手術が必要です。
色あいは紅色に見えるのは、おおよそ3年で引いてきます。
色が引いた後の白色調を目立たなくなるように治すには、よその部分から採取した薄い皮膚を移植して、光った感じを消します。近頃では培養皮膚を使用する手段もあります。


(症例1)

ヤケドの跡が縫い縮められるなら、切り取ってしまうのも手です。形成外科専門医なら傷跡も目立たないようにジグザグに処理します。


(症例2)

手の色合いと近い部分(この場合は太ももでした)から、極薄の皮膚を削り取ってきて、手の甲に移植します。太ももの部分は削り取るといっても擦り傷のようなものなので、また表皮が再生して治ります。手の甲は色合いが近い皮膚に取って代わりますので、傷跡が目立ちにくくなっています。


黄色のあざ治療

黄色のあざは頭部によく見られます。
表皮母斑、脂腺母斑、類器官母斑などの種類があります。
あざの部分は毛髪が無いことが多いので、レーザー治療をしたとしても毛が無い状態は改善しません。
そこで、レーザー治療ではなく、切りとって縫い縮める方法をとります。


(症例1)

手術部位の周囲を清潔に保つために今回は剃毛しました。
真ん中の黄色い部分があざで毛髪は生えていません。
あざの部分だけ切り取ってもキレイな縫い跡にできませんので、赤い線でデザインした紡錘形に切り取ります。

紡錘形に切り取ったおかげで、縫合線の両端が犬の耳(ドッグイヤー)のように盛り上がることなく、平らに仕上げることができました。


(症例2)

この方は、あざのサイズが大きく、耳が近くにあるので引きつれなどにも気を付ける必要があります。そこで単純な紡錘形ではなく、ややカーブを付けてデザインをしています。

かなり大き目のあざでしたので、初回手術はあざを取り切ることで精いっぱい。縫い跡は幅のある状態であります。患者さんには前もって伝えてありますが、この場合には6カ月間隔をあけて、皮膚のツッパリ感が改善してから仕上げの手術をプランしました。

2回目の手術では、十分余裕をもって縫合部を寄せることができました。なお、縫合線が毛髪の流れと並行だと7・3分けのように分け目になって目立ってしまいますので、毛髪の流れと垂直にデザインすることで、上の毛髪がかぶり、すっかり目立たない状態になりました。

皮膚腫瘍の剥離術

皮膚腫瘍の手術というと、メスでごっそり切り取って縫い縮めるイメージがありますが、悪性でなければ必ずしも全部摘出しなければならないとは限りません。
そこで、出きるだけ傷跡を目立たなくするために、腫瘍の底面でスライス(剥離)する作戦をとることもあります。
取った腫瘍は顕微鏡検査をして、悪性かどうかを調べます。またスライスした断面の状態も顕微鏡で確認をして、腫瘍の取り残しがあるかを確認します。病理医の先生にも診断していただきますが、皮膚病理は特殊な分野ですので、形成外科医自らも顕微鏡で見て性状を確認します。


(症例1)

局所麻酔の注射をして、カミソリで削ぎ落しました。


(症例2)

こちらも局所麻酔をして、カミソリで削ぎ取ります。
このあたりの写真を患者さんに見せると「ちょっとまって~」とツッコミが入ります。そうですね、みなさんのご家庭にもありそうなカミソリですよね。
私たちは、刃物で有名なフェザーさんに特注で開発していただいたカミソリを使用しています。普通のカミソリより値段は3倍しますが、切れ味は5倍なので、結局お得なのです。「フェザー採皮刀」と呼んでいます。
愛知医大や中京病院で、全身熱傷の患者さんに極薄分層植皮という救命手術をする際、大活躍しました。近頃はエアーデルマトームとか便利な機械が開発され、若手はそちらを使いたがりますが、このカミソリ1本で必要なレベルまでスライスできる技術は、町医者になった場合、最強のスキルとなります。

こんな風に治りました。非常に技術を要しますので、みなさんは真似して自宅のカミソリで削ぎ落したりしないで、専門医に任せていただきますようお願いします。


(症例3)

粉瘤(アテローム)治療

良性の腫瘍で全身各所にできる皮膚由来のおできです。
よくみると皮膚にポツンと小さなヘソ穴があいており、おできの袋の中と通じています。内部には白色から灰白色、粥状の角質物が溜まっており(まぁ、アカが溜まっているとイメージしていただけばよいです)、この中身が溜まりすぎたり、押さえつけられたことによって壁が破壊されると、中身が飛び出して炎症が起こり、膿みとなり痛みやしこりを生じることもあります。


治療前、結構大きく育っていますが、通常は炎症の強い時期は避け、いったん収まってから手術予定をたてます。私たちの“くり抜きパンチ”を使う方法ですと炎症があっても手術は可能です。


真ん中の黒い点が、ヘソ穴のところです。強くおさえると、このヘソ穴からクサ~イ白い物体が出てきます。
…の位置に直径4mmのくり抜きパンチで4mm程度の穴を開けます。

穴から、写真のような器具を使って、中身を除去します。 このアテロームというおできは、中身を包んでいる袋があります。 従来の外科的手法では、袋の外側から袋を傷つけないようにメスでムキムキにして摘出していました。 私たちの方法は、内側から中身を取り出し、袋も内側から剥がすように取り出すことができます。皮膚の表面は4mmの穴ができるわけですが、傷がふさがるときは縮むようにして治っていきますので、傷跡は案外わからないレベルまで改善します。

眼瞼下垂

私のライフワークとしては、あざのレーザー治療をはじめとした皮膚良性腫瘍の治療。そして、愛知医大・中京病院で連携した全身熱傷の治療が代表的なものです。
おなじ形成外科を掲げていても大学病院によって特色があり、なかでも信州大学形成外科は眼瞼下垂をはじめとした眼の形成外科を手掛けていました。そちらの松尾教授の術式が某公共放送をはじめとしたメディアに紹介され、社会的に広く認知され、今では眼瞼下垂は形成外科医の必修科目となりました。愛知医大でも松尾先生から直接指導を受けた医師を中心に眼瞼下垂治療を手掛けています。
さて、眼瞼下垂症とは、まっすぐ見たときに、瞳孔にまぶたが垂れてかぶさる状態です。
生まれつきのもの、病気によるもの、老化現象としての眼瞼下垂があります。ハードコンタクトレンズや花粉症が原因のものが少なくありません。
両目とも眼瞼下垂とは限らず、片目だけの場合もあります。
「代償期」と呼ばれる初期の段階では、なんとか努力してまぶたを開いています。しかし、「非代償期」と呼ばれる時期になると、もはや努力しても開いていられなくなります。
代償期では、ものを見るときに額にしわがよるようになります。まぶたの筋肉だけでは持ちあげるのが苦しくなり、額の筋肉の助けを借りて、まぶたを開けようとしている状態です。
非代償期になると、まぶたがすっかり瞳孔にかぶさるので、いつも顎を上げてものを見るようになり、診断は容易です。
70~80歳代で「テレビが見にくくなった」との訴えで手術をされる方が多かったのですが、公共放送で有名になってからは、もう少し若手の方も「私、眼瞼下垂だから手術して。」と相談にいらっしゃるケースが増えました。
眼瞼を持ち上げる筋肉の機能には全く問題なく、眼瞼皮膚弛緩症といった状態の方も多いですが、その場合はもう少し簡単な手術方法で解決することができます。
手術は約1~2時間で終了します。保険適応になる場合には、片目で患者さんの負担は3万円程度です。


(症例1)


(症例2)